子どもたちの成長を守るために
― 保護者の姿勢が未来を左右する ―
試合を見ていると、思わず声を出してしまう。
うまくいかない姿を見ると、つい口を出したくなる。
「がんばれ!」のつもりが、子どもを追い詰めてしまった――そんな経験はありませんか?
子どものことを思えば思うほど、感情が動いてしまうのは自然なこと。
私自身、長年サッカーの育成現場に関わる中で、同じように葛藤している保護者の方々をたくさん見てきました。
でも、そこで感じるのはひとつ。
子どもの成長に一番影響を与えるのは、プレーでも成績でもなく、周りの大人の“関わり方だということです。
世界でも深刻な「保護者問題」
感情表現が豊かなスペインでも、試合中に保護者が大声で指示や不満を口にする光景は珍しくありません。
審判への暴言も少なくなく、「なりたくない職業ランキング1位が審判」と言われるほどです。
指導者も、選手だけでなく保護者の様子を気にしながら試合を進めるのが現実。
それだけ、大人の言動が現場に大きな影響を与えています。
私自身の体験から
初めてチームを率いた頃、ある選手が試合中にスタンドの父親を気にしていることに気づきました。
試合後に父親と話をすると、「よくないとは分かっているけど、つい口を出してしまう」と。
その気持ちは痛いほど理解できます。
子どもの頑張る姿に心を動かされない親はいません。
でも、成長のために必要なのは、“見守る勇気”
そして、時には「見て見ぬふりをしない勇気」も大切だと感じました。
育成年代で大切にしたい3つの要素
私が指導の中で大切にしているのは、次の3つのステップです。
- 楽しむ
- 競争する
- 学ぶ
特に低年齢では、何よりも「楽しむ」ことが優先です。
この順番を間違えてしまうと、子どもたちはサッカーの本来の目的を見失い、親子の間に摩擦が生まれてしまいます。
「楽しい」からこそ、「続けたい」「もっと上手くなりたい」という気持ちが芽生えるのです。
“良い親”ほど「余白」を持っている
印象的なのは、上のカテゴリー(強豪クラブ)へ進む選手の親ほど、意外と“口を出さない”ということ。
彼らは「口ではなく、行動で支える」タイプです。
送迎、観戦、練習環境のサポートなど、子どもがのびのびと取り組める“余白”をつくることに力を注いでいます。
試合後の声かけもとてもシンプル。
「楽しかったね」
「頑張ったね」
その一言で、子どもは安心し、次の挑戦に向かう力を得ます。
子どもが見ているのは「結果」ではなく「過程」
子どもの成長は、短いスパンでは見えにくいもの。
けれど、5年後・10年後に確実に差が出ます。
その差を生むのは、日々の小さな関わり方。
目の前の勝敗よりも、「挑戦したこと」や「学んだこと」を認めてあげることが、将来の力になります。
最後に ― 子どもの未来を支える“優しい見守り”
このテーマは、サッカーに限らず、あらゆるスポーツや習い事、教育の場にも共通します。
「わかっている大人」が増えること。
そして、間違った言動を見たときにそっと声をかけ合える社会になること。
それが、子どもたちの未来を守ることにつながります。
私たち大人の一人ひとりの意識が、次の世代の育成環境をつくるのです。

